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ビジネス
輸入ビジネスをやるなら知っておきたい関税の仕組み②
輸入ビジネスに携わるなら避けては通れない
「関税」
前回の記事では、
- 輸入ビジネスに必要な関税の基本的な知識
- 関税の算出方法
について解説してきました。
しかし「関税」と一口で言っても、最近では特殊関税や暫定税率のようなものも登場し、より構造が複雑になりつつあります。
そこで今回はより関税の分野を掘り下げ、
・特殊関税
・暫定税率
・関税ゼロの貿易
について詳しく見ていきたいと思います。
目次
関税の意味と目的
まずはここで関税の意味と目的をおさらいしておきましょう。
関税とは、
海外からの商品を日本に輸入する場合に支払う税金
のことを指します。
関税の目的は、
- 税制収入
- 国内産業の保護
の2本立てで成り立っており、特に、海外から価格の安い商品が入ってきた場合に国内産の商品を守るのに役立っています。
ですから、最近では関税撤廃の動きが活発化していますが、関税が無くなることで
- 国内産の商品が売れなくなってしまう
- 外国産の商品に負けてしまい、雇用や経営が立ち行かなくなってしまう
といった懸念の声があることも事実です。
とは言え、輸入ビジネスにおいて関税がなくなることは、国に対して支払う税金が「少なくなる」または「完全に撤廃される」ことを意味しており、扱う商品、業種によっては恩恵も多いと言えるでしょう。さらに関税が撤廃されることで、適正な競争が促されたり、質の高いメイドインジャパンの製品を世界中にアピールできたりするため、
世界における日本の存在感をアップさせるチャンス
にもなります。
特殊関税
先ほど、関税は「国内産業の保護」が目的の1つであると述べましたが、実は通常の関税のほかに
割増関税
が設けられている品物も存在しています。
これらは、不正な貿易取引や輸入急増などの特別な事情のある産業を保護・救済するための措置として、
貨物・供給者・供給国などを指定して割増関税が賦課
されるものです。
輸入ビジネスで取り扱う商品がこれらの特殊関税に該当するというケースはあまりないかもしれませんが、業種・商品などによっては対象になっていたり、また国の経済・政治動向などの影響で突然該当品目になったりするケースも稀にありますので、知識として知っておいて損はないでしょう。
では特殊関税にはどんなものがあるのでしょうか?
特殊関税の種類としては、下記の4つが挙げられます。
- 相殺関税
- 不当廉売関税(ダンピング防止税)
- 緊急関税(セーフガード)
- 報復関税
それぞれ詳しく見ていきます。
相殺関税
相殺関税とは、輸出国の補助金を受けた輸入貨物に対して、
国内産業保護のために補助金額の範囲内で割増税金が課されるもの
です。日本では、関税定率法の第7条に規定され、課税の手続きや要件などは、この法律および国内の関連法、WTOの協定に基づいて行われます。
相殺関税の要件はWTO協定に基づき法律で定められており、
- 補助金を受けた貨物の輸入の事実がある
- 補助金を受けた貨物と同類の貨物を生産する国内産業に実質的損害等の事実がある
- 実質的な損害が補助金を受けた貨物の輸入によって引き起こされたという因果関係がある
- 国内産業の保護の必要性がある
といったものが対象です。
(参考:https://www.customs.go.jp/tokusyu/sousai_gai.htm)
不当廉売関税(ダンピング防止税)
不当廉売関税とは、輸出国内の販売価格など正常価格より低い輸出価格(いわゆるダンピング価格)で販売された貨物を輸入した場合に、輸入国(この場合は日本)で、
その貨物と同種のものを生産する国内産業に損害が生じる
場合に生ずる関税です。国内産業を保護する目的で、輸入する貨物に対して正常価格とダンピング価格の差額の範囲内で割増関税が課されます。
これらは関税定率法第8条に規定され、こちらの法律をはじめとする関係国内法令とWTO協定に基づいて手続きが行われます。
不当廉売関税の課税要件はWTO協定に基づき法令で定められており、
- ダンピングされた貨物の輸入の事実がある
- ダンピングされた貨物と同種の貨物を生産する国内産業に実質的損害等の事実がある
- ダンピングされた貨物の輸入によって実質的損害が引き起こされたという因果関係がある
- 国内産業の保護の必要性がある
といったものが対象となっています。
(参考:https://www.customs.go.jp/tokusyu/hutou_gai.htm)
緊急関税(セーフガード)
緊急関税という言葉は馴染みがなくとも、
セーフガード
という言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。
実際に日本では、2001年にネギ・生シイタケ・イグサを対象に発令されたことがあります。
(参考:zantei.pdf (maff.go.jp))
緊急関税は、1994年GATT(関税及び貿易に関する一般協定)の第19条、WTOセーフガード協定に基づいて作られている制度であり、
輸入急増による国内産業への重大な損害防止
のために、内外価格差の範囲内で割増関税を課すことのできる緊急措置です。
課税の要件としては、
- 予想されなかった事情の変化により特定種類の貨物の輸入増加がある
- 当該貨物の輸入増加が日本の三洋に重大な損害を与える、または与える恐れがある
- 重大な損害が特定貨物の輸入増加によって引き起こされたという因果関係がある
- 国民経済上、緊急に必要があると認められる
といったものがあります。
(参考:https://www.customs.go.jp/tokusyu/houhuku_gai.htm)
報復関税
報復関税とは、
- WTO協定に基づいて、我が国(日本)の利益を守り、その目的達成のために必要が認められる場合
- ある国が我が国(日本)の船舶、航空機、輸出貨物または通貨貨物に対して差別的に不利益な取り扱いをしている場合
などに割増関税を課す制度です。
この制度については関税定率法第6条に定められており、
指定された貨物の課税価格と同額(従価換算税率100%)以下
で割増関税が課せられることになっています。
(参考:https://www.customs.go.jp/tokusyu/houhuku_gai.htm)
「国定税率」と「協定税率」とは?
実は、商品を輸入する際の関税は
- 国定(基本)税率
- 協定税率
なるものが存在します。
前者は日本政府が独自で定める税率であり、後者はWTOやEPAといった多国間合意の下で決まる税率となっています。
国定税率は日本政府のみで決めることができ、国内産業の声をダイレクトに反映した税率となっていますが、協定税率は
WTOで定められた関税
のため、日本独自のルールで変更することはできません。
ちなみに国定税率と協定税率の2つが定められているときには、WTOが定めた協定税率が優先して適用されます。
さらに「国定税率」は、
基本税率と暫定税率の2本立てで構成
されていることにも注意が必要です。
基本税率は基本的に、一度決まったら変更になることはほとんどありませんが、暫定税率は言葉の通り「暫定(一時的)」な税率であるため、一定の期限があります(期限が来るたびに審議あり)。
暫定税率は、日本の需要バランスの調整が主な目的と言われています。また暫定税率は、
基本税率よりも優先して適用
される点も見逃さないようにしておきましょう。
細かい関税率については、税関のHPから確認できますので、気になる方はチェックしてみてください。
税関ホームページ・輸入統計品目表(実行関税率表)
関税ゼロ貿易とは?
このように、海外から商品を日本へ輸入する場合には
国内法やWTO協定に基づいた関税が課される
ことになります。
しかし近年では
- 自由貿易
- 関税撤廃
の動きが活発化しており、「海外と貿易をしつつ国内産業を守る」という流れから「市場を開放して活発に貿易をし合う世界」へと潮流が大きく変わりつつあります。
こうした自由貿易の代表的な例が、EPA・FTA・TPPといった
貿易制度(協定)
です。
自由貿易制度においては、輸入する貨物に関税を払うことはありません(減税の場合もあり)。つまり輸入ビジネスにおいては、輸入した商品を安い値段で国内市場にて流通させることが可能であり、
強い価格競争力を持つことが最大のメリット
と言えます。
関税は、輸入額が少額であればさほど痛手に感じることはないかもしれませんが、大きなビジネスで莫大な取引額になればなるほど、コストとして重荷になる部分でもあります。
そのため輸入にかかるコストをなるべく最小限に押さえ、価格競争で打ち勝つためには「自由貿易」は追い風となってくれるに違いありません。
自由貿易制度を利用することで、
- 激しい価格競争にさらされてしまうのではないか
- 自分の商品が競争に負けてしまうのではないか
といった心配をされている人もいるかもしれませんが、輸入ビジネスにおいて最も大切なことは「国内にまだ紹介されていないお宝商品・サービスを発掘すること」ですから、
希少価値の高い商品・サービスを関税なしで輸入すること
ができれば、優位性を保ってビジネスができること間違いなしです。
まとめ
今回は、特殊関税や国定(基本)税率、協定税率など
関税にまつわる用語の解説
をするとともに、関税が撤廃された自由貿易の可能性についても言及しました。難しいと感じる人が多い「関税の仕組み」ですが、それに関連するニュースや時事ネタなども含めて、輸入ビジネスをするなら知っておいて損はありません。関税については税関のホームページなどにも詳しく記載されていますので、興味を持った方はぜひチェックしてみてください。
ただし最近では関税が撤廃されている国も多くなっていることも事実。そのため関税の煩わしい手続きは徐々に少なくになってきているようです。関税の撤廃は商品の原価が下がることにも直結しているため、「これから輸入にチャレンジしてみたい」と考えている方にとって、自由貿易の波に乗らない手はありません。
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