PRACTICE
輸入取引の実務について
代金決済の準備方法
目次
代金決済には複数の方法がある
輸入代金の支払いにはいくつかの方法があります。
信用状や送金のほかに、最近では郵便為替やクレジットカードで行うケースも増えてきています。また、荷為替手形を使う方法もあります。
信用状は、貿易全体の25%ほどしか使われておらず、多くはグループ会社同士のやりとりになりますが、取引先から指定された場合を考えて、ここで説明をします。
信用状とは何か
信用状とは「Letter of Credit (L/C)」と言われる“支払い確約書”で、取引銀行が輸入者に代わって輸出者に発行するものです。
輸入者にとってのメリットは、信用状を開設することで、指定の期日までに船積みをしてもらえるという点でしょう。輸出者にとっては、代金を確実に回収できるというメリットがあります(*1)。
デメリットは、銀行との信頼関係がなければ信用状そのものが開設できないという点です。
手続きには時間がかかりますし、開設できたとしても銀行との取引が浅い場合、L/C金額の50~100%に相当する額の保証金や担保の差し入れを要求されることがあります。
ただ、逆に考えると「L/C決済ができる=銀行がその会社を信頼している」ということになり、これは取引先に安心感を与えることにつながります。
*1 輸出側になった場合は、代金回収を確実にするために信用状決済がもっとも望ましい方法になる。
信用状の開設に必要な書類
初めて信用状を開設する場合、取引銀行に下記の①~③の書類を提出します。
①銀行取引約定書
与信取引全般で使われる、基本の約定書。
銀行と取引をするための基本的な取り決めを定めた書類。略称として「ギントリ」と呼ばれることもある。
②商業信用状約定書
輸入時の信用状取引全般に関して約束事を定めた書類。
銀行によっては輸出手形の買取りなどほかの外国為替取引も含めて外国為替取引約定書とすることもあります。
あなたと銀行が信用状取引を行うための契約書で、銀行側が支払いを保証し、リスクや損害を回避するためのものです。
この書類により、あなたが代金の決済をするまでは、輸入された商品は銀行の担保として扱われることになります。
③輸入担保荷物保険に関する約定書
代金を決済するまで、輸入品が銀行の担保になることを定めた書類。
②商業信用状約定書で述べたように、信用状決済の場合、決済するまでは商品は銀行の担保になります。
しかし、銀行が商品を持ったままだと代金を回収できません。そのため銀行は、担保にした商品を輸入者に貸し渡して売却させ、その代金を回収します(貨物の貸し渡し(*2))。この約定書は、上記の法的側面を明文化した書類です。
*2 貨物の貸し渡しは輸入担保貨物保管証(Trust Receipt)を差し入れることから「T/R」
④信用状開設依頼書
信用状を開設するときに、詳しい信用条件などを記して銀行に提出する書類。
添付資料として売買契約書などが要求される場合もある。
これは①~③の書類とは少し違い、取引をするたびに提出しなければいけません。銀行は取引のたびに与信行為をするので、その審査のために必要だからです。
この書類は契約書の内容を集約したもので、輸入者・輸出者が合意した内容を明示し、それに基づいて信用状を発行してもらうためのものです。ですから、銀行はこの開設依頼書に基づいて、あなたが指示した内容や条件で信用状を開設します。
なお、書類を作成する際、取引の際に相手と交わした約束事を正確に記入しておきましょう。