PRACTICE
輸入取引の実務について
貿易条件を理解する
輸入条件の交渉に関連して覚えておきたいのが、「貿易条件の国際ルールとは?」でご紹介したインコタームズにおける貿易条件4グループ11種です。
目次
貿易条件によって変わるリスク
どの貿易条件で取引するかによって、輸出者・輸入者それぞれが負担するリスクと費用の範囲が変わってきますし、保険加入の手続きなども変わってきます(*)。
では、それぞれどのようなものなのかご説明していきましょう。
* アメリカでは、独自の貿易条件として「改正米国貿易定義(Revised American Foreign Trade Definitions)」が使われてきた。現在でも一部使われている場合があるので注意!
Eグループ
Eグループは売主(輸出者)の負担が最も少ない引き渡し条件で、「EXW」の1条件のみです。
EXWでは、売主が商品を自国の工場敷地内で買主(輸入者)に渡し、その後の費用(運送費や保険料)、リスクはすべて買主が負担します。
Fグループ
Fグループは、FOB、FCA、FASの3条件。費用とリスクは輸出地の港や空港で売主から買主に移ります。
3条件のうち、FOBは実際の貿易でよく使われる条件です。
売主は買主指定の船に商品を積み込みますが、売主が費用とリスクを負担するのは船上まで。それ以降は買主の負担になります。
FCAでは、運送人に商品を渡すまで売主が費用・リスクを負担します。FCAは、FOBから派生した条件だと考えてください。
なぜこのような条件になったかというと、FOBが在来船を想定しているのに対し、FCAはコンテナ船での輸送を想定しています。在来船はクレーンなどを使って船積みしますが、コンテナ船の場合、商品は船積みされる前に運送人に引き渡されます。FCAは、こうした新しい積み込み方式に対応できるように、つくられた条件なのです。
FASも、FOBと同様、在来船を想定した条件です。
FOBと異なるのは、貨物が本船の側面につけられたときに費用・リスクが移ること。この条件は、おもに木材など木材など海に浮かべた状態でも問題がない貨物で適用され、一般の貨物ではあまり採用されません。
Cグループ
Cグループは、CFR、CPT、CIF、CIPの4条件です。
売主は、輸入国までの運送費を手配しますが、リスクは輸出国の国内までしか負担しません。
CFRは、FOBと並んで、実際の貿易でよく採用される条件で、「C&F」と呼ばれることもあります。
貨物が本船に積み込まれた時点でリスクが買主に移るのはFOBと同じ。ただし、売主は輸入港までの運送費を負担します。
CPTはコンテナ船輸送を想定してつくられた条件です。そういった意味では、FCAとよく似ています。
FCAと同様、商品を運送人に引き渡した時点でリスクが売主から買主に移ります。売主は輸入港までの運送費を負担します。
また、CIFでは、売主は輸入港までの運送費に加え、保険も負担します。
CIPは、CIFをコンテナ輸送用にアレンジしたものです。
CIPでは、同じコンテナ輸送用の条件であるCPTと同じように、売主がリスクを負担するのは、運送人に引き渡すまでです。
また、売主は、CIFと同様、輸入港までの運送費と保険を負担します。
このCIFをコンテナ輸送用の条件であるCPTと同じように、売主がリスクを負担するのは、運送人に引き渡すまでです。
また、売主は、CIFと同様、輸入港までの運送人保険を負担します。
Dグループ
Dグループは、売主の負担がもっとも大きい条件で、DAT、DAP、DDPの3条件です。
DATは「インコタームズ2010」から新設された条件で、輸入国側の指定仕向港や指定仕向地のターミナルにおいてリスクが移転する条件です。
この場合の指定ターミナルとは、コンテナ輸送の輸送の場合はCYやCFS、在来船輸送の場合は埠頭や港湾の保税倉庫、航空輸送では、エアフォワーダーの倉庫や空港のターミナルなどを指しています。
費用の分岐点は、リスクと同じくターミナルで移転します。また通関に関しては、輸出通関は売主が、輸入通関は買主が負担します。
DAPもDAT同様、「インコタームズ2010」から新設された条件です。DAPは、輸入国側の指定仕向地において、輸入通関の前にリスクと費用が移転する条件。売主は、自らのリスクと費用でコンテナ船や航空機などの輸送手段を使って、指定仕向地まで輸送します。そして、荷卸しができた状態で、貨物は買主に委ねられます。DAPは、ターミナルなどに荷卸しした貨物をさらに他の場所に輸送して荷さばきをする場合に使われます。この場合、指定仕向地には配送センターなどの施設が利用されます。
DDPは、輸入国側の指定仕向地で、輸入通関まで売主が負担し、その後にリスクと費用が移転する条件です。
DDPもDAPと同じように、売主が自らのリスクと費用でコンテナ船や航空機などの輸送手段を使い、指定仕向地まで貨物を輸送します。さらに売主は、輸入通関費用、関連諸税を支払った後、輸送手段の上で貨物を買主に委ねます。その意味で、DDPはもっとも売主の負担が大きい条件だと言えるでしょう。